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巣箱

細々とポケモン小説を書き綴るサイトです。

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第六話 予想外

 チンピラを追い払いキレイハナを助けたレインは、森の中で途方に暮れていた

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「うわー方向わかんねぇー」
 一人ごちりながら、背中の炎の光を頼りに足早に木々の間を抜けて行く。
 ただでさえ見つけにくい場所にある家が、夜のせいで余計にわからなくなっていた。
 月の位置で方角を確かめたいが今日は新月。月明かりすらない森はまさに闇である。
  
 もうこのまま野宿をしようかと考え始めていると、何やら草むらが激しく揺れる音が聞こえた。
 しかもレインがいる場所を目指してだんだんと近づいてきている。
 この時間帯と言えばゴーストタイプが活動する時間だ。
 自分を脅かそうとしているのか、それとも命を狙ってるのか――後者でないことを祈りながら背中の炎を消してレインは幹の後ろに隠れた。

 刹那、草むらから勢いよくポケモンが現れる。
 レインはまだ目が闇に慣れていないため、どんなポケモンかはわからなかった。
「おかしいな。この辺で光が見えたはずなんだが」
 張りのある声が聞こえてきたと思うと、仲間がいるのは誰かの深い吐息がレインの耳に届いた。
「ほら見間違いだったろう。時間を無駄にしたな」
 先ほどの声とは打って変わってしゃがれた声が響く。張りのある声の主はぼそぼそと何か言い訳をしているようだったがその言葉はレインに聞こえなかった。
「もういいから早くツヴァンクと合流するぞ。でないと、俺がボスに怒られる」

 レインはボスという言葉の響きが気になり幹から少しだけ顔を出した。暗闇のためやはり姿は見えないが輪郭は伺えることができた。しかし相手の頭と思えるところがどうにも得体の知れない歪な形をしておりレインを戦慄させた。
「――わかったよ。だけど俺の頭の上に乗らないで自分で飛んだらどうだ」
「飛んだら目立つからダメだ」
 ――頭の上?
 レインはもう一度よく目を凝らしてポケモンを見てみた。そうすると歪つと思えた頭は、乗っているポケモンと乗られているポケモンの頭の影が合わさった形だとわかる。

 レインは間違えたことを恥ずかしく感じながら二人の姿を観察する。一人は鹿のような姿をしていて楕円形の角を持っている。もうひとりは相手の角にしがみついているようで、細長い体に四本の羽を持っている。姿から見て虫タイプだと予想を立てた。

「行くぞ」
「いちいち命令するな」
 苛立ちの声を上げながら鹿に似たポケモンはレインに気づかないままその場を去っていった。
 レインは草むらをかき分ける音が遠のいてから、隠れていた幹に座り込んだ。
 あの二人組はなんだったのだろうと疑問が思い浮かぶ。しかし座り込んだせいで疲労と眠気が一気に襲いかかってきた。
 レインは考えるのはあとでもできると思い、その場で眠りについた。

 ◇◇◇

 森で野宿をしたレインは朝が明けた頃になんとか家に戻ることができた。しかし、部屋の片付けが待っていたことを思い出して悲嘆に暮れていた。

 そんな時、玄関のドアを勢いよく叩かれた。レインは面倒くさくて叩く音を無視していたが、止む気配がない。
「……何でこんな時に来るかなぁ」
 イラつきを押さえながら取っ手に手をかけドアを開けると、大きな背の高いポケモンが立っていた。
 鎧のように硬い緑色の体をしており、目つきの悪さが印象的だ。

「あの、すみません。ちょっと頼み――」
「他当たって下さい」

 レインはドアを勢いよく閉めた。
 しかし相手はその体に似合わない速さで隙間に足を滑り込ませ、それを阻んだ。レインはそれを見て大きく舌打ちをした。
「……最後まで聞いてくれよ」
「どうせ何かの勧誘だろ。こんな辺鄙な場所までご苦労様。まぁバンギラスのあんたの場合勧誘業するならまず人相を変えたほうが良さそうだけど」
 毒舌を吐きながら、なおもドアを閉めて相手の足を圧迫する。

 目つきの悪いポケモンは、挟まれた足が痛いせいで顔を歪めていた。
「ちっ、違う。勧誘じゃないから! 怪我したからちょっと救急器具を借りたいだけだ! あとどさくさに紛れて悪口言うな!」
「怪我?」
 取っ手に込める力を弱め、少しだけドアを開けると確かに相手の体には打撲傷が見えた。

 レインは警戒しながらドアを開けた。
「嘘じゃなさそうだけど、怪我ならポケセンに行くべきだろ」
「行くぐらいならあんたに見てもらったほうがいい」
「いや、看ないしできないから」
 レインは真顔で即答した。
「満身創痍のけが人を見捨てるのか」
 何を言っているんだこいつはと、レインは一人ごちりたくなった。

「知らん。俺は面倒事が嫌いなんだよ。つーかさ、俺今疲れてんだよ」
「あーもしかして夜勤明け? それはごめん。悪かった」
 謝るが引くことを考えないバンギラスにレインは頭を抱えたくなった。
「いや夜勤ではないけどさ。けどさ――」

「居たぁぁぁぁ!」

 背後から聞こえてきた叫び声に、バンギラスは露骨に嫌な顔を示した。
「見つけたぞ!」
 甲高い声で叫ぶそのポケモンは、紫色の瞳を釣り上げながら細く長い四本の足を地面に荒々しく踏みしめてやってきた。

「あのアリアドスはあんたの知り合い?」
 レインの質問にバンギラスは嘆息を吐いて肯定した。
「こんな所まで逃げて。観念しろ!」
「俺は大丈夫だって言ってんだろ! センターには行かねぇ!」
 バンギラスは威勢良く叫んだ。ただし、レインの後ろに隠れながらである。
「大丈夫なわけないだろ! お前全身ボロボロなんだぞ!」
「五月蝿い。俺の体だから気にするな!」
 両者の間に挟まれて呆然と立ちすくむレイン。

「……あぁ面倒くさい」
 レインはそう呟いて振り返ると、バンギラスを見上げた。
「なん――」
 バンギラスの言葉とかぶさって鈍い音が響いた。一節立ってバンギラスは崩れるように倒れこんだ。
「なっ」
 言い争いをしていたアリアドスは、倒れた友の姿を見て言葉を失う。
「気を失っただけだから心配するな」
 レインは殴った手を摩りながらバンギラスを見下ろしていた。

「何したの?」
「気絶させた。この隙にこいつをポケセンに運びなよ。どうせポケセン嫌いでここまで逃げてきたっておちだろ?」
「あっあぁ、そうなんだよ。こいつセンターめちゃくちゃ嫌いでさ。こんな大怪我なのに行きたくないからって警察の前で暴れて森に逃げたんだよ」
 アリアドスは倒れているバンギラスを呆れた様子で見下ろした。

「警察? 医者じゃなくて?」
「数時間前に公園で暴れてるドサイドンがいたんだよ。ラスはそれ止めるために突っ込んで怪我を負ったんだ」
「それはまた勇気ある行動だな」
「けど、かなりやばかったよ。相手のドサイドン正気を感じなかったし、乱闘レベルを越えてた」
 アリアドスは当時の光景を思い出しているのか、若干声が震えていた。
 話を聞いていてレインはふと昨日のドサイドが思い浮かんだ。

「ドサイドンねぇ」

 レインが何気なく発した言葉に、アリアドスは目を光らせる。
「もしかして何か知ってる?」
「えっいや……昨日町行った時にドサイドンを見かけたからさ」
「本当に? よかったらそれ警察に話してくれない?」
「はっ?」
 突然の事態にレインは慌てた。今外出をしてしまったら今日中に掃除が終わらないことは目に見えている。
「意味ないって。本人かどうかはわからないし、ドサイドン違いだと思うよ。それに俺今から家の掃除をしないといけないしさ」
 必死に弁解するが、アリアドスは無慈悲に一蹴した。

「関係無いさ! 行こうぜ!」

 アリアドスは口から糸を吐いてレインの腕に巻きつけて引っ張った。
「止めろよ!」
 レインは家の中に戻ろうとしたが、今度は足払いをされ尻餅をついた。
「あっそうだ。あんた名前なんて言うの?」

 アリアドスから脈絡もなく聞かれたので、レインはこの状況でも反射的に答えてしまった。
「レインだけど、いやその前にこれって拉致だよな?」
「俺リドーって言うんだ。そこのバンギラスはラスって言って俺の友達なんだ。よろしく!」
 アリアドスは質問を無視して自己紹介すると、バンギラスに近寄った。

「こっちはよろしくな――」
「運ぶのを手伝ってくれない?」
 言葉を遮られ、レインは眉間に皺を寄せる。
「なんで運ばないといけないんだよ。俺は関係ない」
「誰が気絶させたんだっけー」
 アリアドスの非難を含む視線を向けられ、レインは押し黙った。

 このままこのアリアドスを焼いてやろうかと思いながらもしぶしぶバンギラスを運ぼうとしたが――――。
「重っ」
 背中に乗せて運ぼうとしたが、持ち上げるだけで精一杯だった。

「200kgあるからね」
「重いわ! 痩せろよ!」
「ラスはこれでも平均よりは2kg痩せてるよ」
「変わんねぇーよ! それほとんど誤差の範囲だろ!」
 レインは持ち上げていた手を話して荒々しくバンギラスを下ろした。

「無理。運べない」
「仕方ない。これ使うか」
 アリアドスはどこからか水色をした球を取り出した。
「それは?」
「説明より体験したほうが早いよ」
 アリアドスは長い足先でレインとバンギラスに触った。瞬間周りの風景が移り変わり、浮遊感が体を襲った。
 それも束の間で、地面に足がついたと思った時にはポケモンセンターの前に立っていた。

「テレポートした?」
「うんそうだよ。これは知り合いに作ってもらったテレポート能力を持つ石なんだ」
「だったら最初からそれ使えばよかっただろ!」
「回数が限られてるから節約したかったんだよ。看護師さん呼んで来るから、ここで待ってて」
「えっ」

 反論する間もなくアリアドスはレインを残してポケモンセンターに入っていった。レインはがくりと項垂れて、気絶しているバンギラスの横に座り込んだのだった。

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某小説サイトで書いてたものを移転させています。現在書き直し&連載中です。たまに一次創作も書いてます。
なお他小説投稿サイトと違う作品を投稿してます。

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