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巣箱

細々とポケモン小説を書き綴るサイトです。

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バグの森④ ーヤツカハギー

 技を使ってキコリを村まで運んでいると、カモネギが家の前で腕を組んで仁王立ちとなって待ち構えているのが見えた。あの様子だと、自分を忘れて行った主人に対して大変ご立腹のようだ。


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しかし腹がつというならこちらもそうだ。忘れられたのなら追いかければいいだけの話。無意味に意地を張ったせいでキコリが怪我をしたのだ。手ぶらで森に入ることが、どれだけ危険かカモネギが知らぬはずがない。

私が村に入るとまるで来るのを見越していたように、カモネギは驚くことなく迎え入れてくれた。運ばれてきたキコリを一瞥してため息をついている。

「……なぜキコリを放った」

家の前にキコリを下ろしながら、私は聞いた。

「森の危険性を再認識させるため」
「それだけか」

 そんなつまらない理由、納得のいくものではない。私の殺気を感じ取ったのかカモネギは眉間にシワを寄せる。

「そんな簡単にかっかすんな。最近キコリが隣町までの道案内をしてるのは知ってるだろ?。その時俺を連れずに森に入ることが多いんだよ」
「……一人でか」
「そうだよ。昼だろうが危険は危険。縄張りを把握してるから大丈夫だろうと考えてるんだろうが、甘いよな」

カモネギの言葉に私は唸る。確かに認識が甘い。

「しかし万が一のことが起きたらどうする。今回は私が守れたから良かったが……」
「あったりまえだろ。お前がいるから放置できたんだ。わざわざ村まで送り届けるぐらい面倒見の良い奴だぞ」
「私を頼るな。ずっとそばにいられるわけではないんだから」
「そう言いながら毎回見に来てるの知ってるぞ。手持ちに戻りたいなら戻ってこいよ」
好き勝手言う。私は答えずに身を翻して森へと姿を消した。

 だがまた近いうちに、意識がある時に会わないといけない。
 私に感謝を伝えるためにキコリが森に入ろうとするかもしれない。キコリと言えども森の奥深くに入るのは危険だ。いつでも私がそばにいてやれることはできない。それにヨヅクに目をつけられるのも癪だ。なにかとキコリを惑わそうとするから気に食わない。

 私は三対の脚を駆使して枝と枝を飛び越える。ふいに、朧月が視界に入った。
 きっとオグモは苛立ち、コウヒは喜んでいることだろう。

 そんなことを考えていると、巣に戻ろうとしているオグモを見つけた。目の前に降り立つと、それはそれは不快な表情を見せてくれた。
「奇遇だな」
 そう言えばオグモは苛立ちげに地面をひっかく。私と会ったことがものすごく不愉快なようだ。
 普段から不機嫌そうな顔が今日は一段と悪い、いや、疲れてるのか。朧月でもここまで苛立つ必要はあるまい。なにかあったのだろう。

「……なんで居るんだ」
「何か問題でもあるのか」

 本当なら私の存在事態がこの森にとって問題なのだろう。だがオグモが言う言葉が違う意味だろう。

「……老いぼれ鳥がけしかけたよそ者鳥によって息子が怪我するし、月は顔出さんわ、ガキにケンカ売られその上お前に出くわした。厄日というのは今日のことを言うんだろうな」

 なるほど。私の見解は間違っていなかったようだ。それは確かに気の毒だ。

「息子は無事なのか?」
「あぁ、仲間が助けてくれたから平気だ。けど早く帰って無事を確かめたいんだ。用が無いならどいてくれ」

 威圧的に言っているものの、いつものような覇気は感じられなかった。妙に足を気にしているのも気になる。

「足に違和感があるのか?」
「あ? あぁ、ここに来るまでにお前んとこのガキにあった」

 ガキというのは、リンドウのことだろう。しかし、あいつはまだ遊んでるはずだが……。そこで悲鳴が聞こえなくなてから大分時間が経ってることに気づいた。

「練習台を与えたはずだが、もう壊したか」
「気絶してたから反応なくなって飽きたんだろ。言っとくが俺はあいつと戦ってないからな」
「見ればわかる。リンドウもイトマルの時とは違う。戦ってたら勝ち負け関係なく足の一本や二本取られてるだろう」

 あいつは未だに技の力加減を知らない子供だ。イトマルの時は可愛い攻撃ですんでいたが、今は私でさえ対処が遅れると生死に関わる。

「子育てに口出しする気はないが、そろそろ本格的に加減を教えてやれよ。放ってたらいつかお前の脚が飛ぶぞ」

 ――言葉どおりな。とオグモは珍しく神妙な顔で言ってきた。私のことを心配していると言うのか。あまりにも言動がおかしくてつい笑いが漏れた。

「笑うな。気持ち悪い」
「いや。よもやお前から心配されるとは思わなかったからな」

 化物と呼ぶ相手にそんな言葉をもらえば笑うに決まっている。そんな私にオグモはあきれた顔で言った。

「お前の足を飛ばした時のガキのことを考えて言ってるんだ」
 ほう、そう来るか。だがそれはそれで異様なことだ。なんせ、リンドウもまた私ほどではないが、異常個体なのだから。

「お前はリンドウのことを同族と考えているのか」
「そうだ」
「ならばなぜ群れから追い出した。幼い時から群れに外され孤独に生きてたあいつを今更同族と言うのかお前は」
「……ガキを群れから追い出したのは前のボスだ。俺ではない」

 顔を逸らし、バツが悪そうにオグモは言った。

「ならばこそ、何故群れに迎え入れない」
「今入ってもほかの仲間に疎まれるだろうし、何よりあいつが群れに入ることを嫌がるだろうさ。それに、そんなこと言ってみろ。切れて襲いかかってくるのがオチだ」

 確かにオグモの言う通りだろう。リンドウは群れを憎んでいる節がある。しかし、こいつとリンドウの間にある因縁もまた理由の一つと私は踏んでいる。

「確かにそれもあるだろう。だが本当は先代の子だから入れないのでは? 先々代の子であるお前は、親を殺した先代をひどく憎んでいる。違うか」
「……だからなんだ。リンドウには関係ない話だ。奴は捨てられ、お前のガキになった」

 オグモは苛立ちながら言い放つ。

「俺が奴を同族だと思えるようになったのはお前のおかげだよ。本当に異種であるお前と比べたら、ガキの方はただ色違いなだけだって気づいた」
「異種か。よく知ってるな」
「お前が自分でそう言ってただろう。化物」

 嫌悪感を隠さないオグモを見ると、笑いがこみ上げる。こういう素直なやつと関わるのが一番楽だ。腹の探り合いをしなくて済む。

「そうだったかな? 良く私の言葉を覚えているな。嫌っているくせに」
「……お前の発言は本当に癇に障る」
「事実を言ったまでだ」
「もういい。やはりお前と話すと疲れる」
「疲れると分かっているのに私と話すのか。物好きだな」

 本当に物好きなやつだと驚いていると、オグモはものすごい不機嫌な顔で毒づきをしてきた。
 間合いを取って避けると、舌打ち交じりで体制を立て直す。

「また何か癇に障ったか?」
「お前がリンドウの親だってことを忘れてたよ。本当にお前は嫌な奴だ」

 オグモはそう言い捨てると、草むらの中に姿を消した。怒った理由が良くわからず理由を考えたが、やはり分からなかった。気にせずリンドウを探しにオグモが来たであろう道を進んだ。

 すぐに糸で戯れているリンドウを見つける。糸をサイコキネシスではがそうとして、周りの地面や木々を引き抜いていた。
「だぁ! それじゃないってのに!」
 地団太を踏み、八つ当たりよろしく持ち上げた木や土をどこかに飛ばしている。何度も試して失敗したのか、リンドウの周りだけ地面が掘り返されている。大きな落とし穴が作れそうだ。
「リンドウ。まずは落ち着け」

 私が声をかけると、リンドウは真っ青な顔をして平伏する。

「ヤツカ様! どっどうしてここに?」
「お前を探しに来たんだよ」

 リンドウに絡まっている糸をサイコキネシスでどかしてやる。複雑に絡まっているようだったが、結び目は切り捨てた。リンドウは私の技に見惚れ、同時に肩を落として落ち込んでいた。

「リンドウ帰るぞ。また今度練習すればいい」
「はっはいヤツカ様」

 リンドウはいそいそとよそ者を運ぼうと糸を加えていた。
 技で運べと言おうとしたが、流石に森の中に血の海を作ったら処理が面倒だ。それにキコリに迷惑がかかるのだけは避けたい。

「……それは道に捨てておけ」

 人間たちが拾って対処させればいいと思い、リンドウに命令した。
 何よりキコリが私を心配してくれるかも知れない。どうやって会いに行こうかと考えながら、私は寝床に帰った。

 

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このブログについての説明は、Aboutをお読みください。
某小説サイトで書いてたものを移転させています。現在書き直し&連載中です。たまに一次創作も書いてます。
なお他小説投稿サイトと違う作品を投稿してます。

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